kennyheadway's thinking

こちらは日々思うこと、COVID-19について思うこと述べていくことになりそうかな。

COVID-19は空気感染という見方。Science誌からの知見

サイエンス誌にAirborne transmission of respiratory viruses『呼吸器系ウイルスの空気感染』が2021年8月27日に掲載された。この総説はボリュームが多いので、図を中心に抜粋した。イラストを見るだけでもどのようにエアロゾルが体内に侵入するかが良く理解できる。新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、直径がおおよそ100ナノメートル(0.1マイクロメートル)といわれている。エアロゾルはサイズが様々で、大きさによっては気管支にくっつくのか、肺まで到達するのか場合によるが、著名な著者の総説の中身を見てみよう。

https://www.science.org/doi/10.1126/science.abd9149

www.science.org

 

この総説の概要は以下のとおり

  • COVID-19のパンデミックにより、呼吸器系ウイルスの感染経路に関する従来の考え方を更新する必要性と、その理解に重大な知識のギャップがあることが明らかになった。
  • これまでの飛沫感染や空気感染の定義では、ウイルスを含んだ呼吸器の飛沫やエアロゾルが空気中を移動して感染に至るメカニズムを説明できていない。
  • この総説では、エアロゾルによる呼吸器系ウイルスの感染について、エアロゾルの生成、輸送、沈着に関する最新の知見を紹介するとともに、感染経路として、飛沫・噴霧の沈着とエアロゾルの吸入の相対的な寄与に影響を与える要因について考察している。
  • 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の研究によってエアロゾル感染に関する理解が深まったことで、他の呼吸器ウイルスの主要な感染経路を再評価する必要があり、それによって空気中の感染を減らすためのより良い情報に基づいた制御が可能になると考えられます。

なお、レビューサマリーが冒頭の1ページにぎっしりまとめられている。文献が200程引用されて述べられた総説の11頁はさらに詳しく理解する上ではとても有用な内容だと思う。その中の図が何よりも理解が得やすい。

レビューサマリー前文のDeepL翻訳を以下に記す。

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出典:Airborne transmission of respiratory viruses『呼吸器系ウイルスの空気感染』
(Review Summaryの図)呼吸器系ウイルスの空気感染に関わる段階。
ウイルスを含んだエアロゾル(100μm未満)は、まず感染者の呼吸活動によって発生し、それが吐き出されて環境中に運ばれます。これらのエアロゾルは、感染力が維持されていれば、潜在的な宿主が吸い込んで新たな感染症を引き起こす可能性があります。飛沫(100μm以上)とは対照的に、エアロゾルは空気中に何時間も留まり、吐き出した感染者から1~2m以上離れた場所まで移動し、近距離でも遠距離でも新たな感染を引き起こす。
背景
呼吸器系病原体の主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみから発生する飛沫への曝露や、飛沫に汚染された表面((接触感染)の媒介)への接触であると広く認識されている。空気感染とは、主に感染者から1~2m以上離れた場所で、5μm以下の感染性エアロゾルや「飛沫核」を吸い込むことと定義されており、このような感染は「珍しい」病気にのみ関係すると考えられてきた。しかし、重症急性呼吸器症候群コロナウイルスSARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)-CoV、インフルエンザウイルス、ヒトライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)など、多くの呼吸器ウイルスの空気感染を裏付ける確かな証拠がある。COVID-19のパンデミックでは、飛沫感染、付着物感染、空気感染に関する従来の考え方の限界が明らかになった。SARS-CoV-2の飛沫感染や付着物による感染だけでは,COVID-19パンデミックで観察された多数の超拡散現象や,屋内と屋外での感染の違いを説明できないことがわかった。COVID-19がどのように伝播するのか、またパンデミックを抑制するためにどのような介入が必要なのかをめぐる論争により、呼吸器系ウイルスの空気感染経路をより深く理解する必要性が明らかになった。

前進
呼吸器の液滴やエアロゾルは、様々な呼気活動によって発生する。空気力学的粒子径測定法や走査型移動度粒子径測定法などのエアロゾル測定技術の進歩により、呼気エアロゾルの大部分は5μm以下であり、呼吸、会話、咳などのほとんどの呼吸活動では大部分が1μm以下であることが示されている。呼気エアロゾルには複数の大きさのモードがあり、これは呼吸器における生成部位や生成メカニズムの違いに関連している。エアロゾルと液滴の区別には、これまで5μmが用いられてきたが、エアロゾルと液滴の大きさの区別は、1.5mの高さから5秒以上静止した空気中に浮遊し、通常は放出者から1~2mの距離に到達し(エアロゾルを運ぶ気流の速さに依存する)、吸入できる最大の粒子径を示す100μmであるべきである。感染者が作るエアロゾルには、感染性のあるウイルスが含まれている可能性があり、小さなエアロゾル(<5μm)にはウイルスが濃縮されているという研究結果がある。ウイルスを含んだエアロゾルの輸送は、エアロゾル自体の物理化学的特性や、温度、相対湿度、紫外線、気流、換気などの環境因子に影響される。吸入されたウイルス入りエアロゾルは、気道のさまざまな部位に沈着する。大きなエアロゾルは上気道に沈むことが多いが、小さなエアロゾルは上気道に沈むこともあるが、肺胞の奥深くまで入り込むことができる。換気が感染に与える強い影響、屋内と屋外での感染の違い、十分に立証されている長距離感染、マスクや目の保護具を使用しているにもかかわらず観察されたSARS-CoV-2の感染、SARS-CoV-2の屋内での高頻度のスーパースプレッディング現象、動物実験、気流シミュレーションなどが、空気感染を示す強力かつ明白な証拠となっている。SARS-CoV-2の飛沫感染ははるかに効率が悪く、飛沫が支配的になるのは、個人同士が0.2メートル以内で会話をしているときだけであることがわかっている。エアロゾルと飛沫の両方が感染者の呼気活動中に生成されることがあるが、飛沫は数秒以内に地面や表面に速やかに落下するため、飛沫よりもエアロゾルの方が多くなる。空気感染の経路は、これまで飛沫感染とされてきた他の呼吸器系ウイルスの感染拡大に寄与していると考えられます。世界保健機関(WHO)と米国疾病予防管理センター(CDC)は、2021年にCOVID-19を短距離と長距離の両方で拡散させる上で、ウイルスを含んだエアロゾルの吸入が主な感染様式であることを公式に認めた。

今後の展望
病原体の空気感染は、これまで十分に評価されていなかった。その理由のほとんどは、エアロゾルの空気中での挙動についての理解が不十分であったことと、少なくとも部分的には、逸話的な観察結果が誤って伝えられていたことによる。飛沫感染や糞尿感染の証拠がないことや、エアロゾルが多くの呼吸器系ウイルスの感染に関与しているという証拠がますます強くなっていることを考えると、空気感染はこれまで認識されていたよりもはるかに広く行われていることを認識しなければならない。SARS-CoV-2感染について分かったことを考えると、すべての呼吸器系感染症について、エアロゾルによる感染経路を再評価する必要がある。換気、気流、空気ろ過、紫外線消毒、マスクの装着などに特に注意して、短距離と長距離の両方でエアロゾル感染を軽減するための予防措置を講じなければならない。これらの対策は、現在のパンデミックを終わらせ、将来のパンデミックを防ぐための重要な手段である。

本篇については、今後レビューすることもあるので翻訳をかけて別ブログに掲載した。

『呼吸器系ウイルスの空気感染』Science誌より 1/5

『呼吸器系ウイルスの空気感染』Science誌より 2/5

『呼吸器系ウイルスの空気感染』Science誌より 3/5

『呼吸器系ウイルスの空気感染』Science誌より 4/5

『呼吸器系ウイルスの空気感染』Science誌より 5/5

 

なお、9/8付でAERA dotからこの総説をもとにしたエアロゾルについての記事が掲載されていた。

dot.asahi.com

 

ミュー株について

ミュー株はコロンビア由来

ミュー株とは南米コロンビア由来の変異した新型コロナウイルスのことを言っているようだ。コロンビア共和国の人口は5,034万人(2019)で、日本の約4割程。人口で換算すると6月25~30日のピーク時の感染者数、死亡者数は日本のピーク時よりも多いと思う。

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出典:REUTERS COVID-19 Tracker Columbia 2021/9/9

コロンビアにおける新型コロナウイルスの感染状況・グラフ*

ミュー株は、WHOが8月30日に「注目すべき変異株(Variant of Interest)」に指定した。スパイクたんぱく質には、以下の変異の特徴がある。

  • P681H変異。英国アルファ株と同じ変異で、S1/S2フリン切断部位に近く、コロナウイルスでは高い変動性を持つ。ウイルスが細胞に侵入しやすくなるといわれている。
  • E484K変異。南アフリカのベータ株、ブラジルのガンマ株と同じ変異で、ACE2に結合するRBDに存在する。免疫を回避する働きがあるといわれている。
  • N501Y変異。英国アルファ株と同じ変異で、ACE2に結合するRBDに存在する。ACE2への結合力がより高くなるため感染しやすいといわれている。

これらの特徴をみれば、厄介な変異株を寄せ集めたとんでもないような変異株だと思われる。コロンビアで起こったことを調べてみると、何か見えてくるかもしれない。ペルーで流行したラムダ株、ブラジルで猛威を奮ったガンマ株など、南米は由来の変異株がいくつかある。この変異株がデルタ株のように世界中に流行していないのは人流抑制が働いているのかもしれない。南米に直接影響がある隣国はアメリカになるが、アメリカに至っても現在はデルタ株が蔓延している。

現時点で懸念されるのはデルタ株 (WHO)

9/7の米国CNBCニュースでは以下のように報道し、今は最も懸念されるのがデルタ変異株であることを言っている。

WHOによると、ミュー型が出現したにもかかわらず、デルタ型が「最も懸念される」COVIDの亜種である。

急速に拡散するデルタ型は、ミュー型の出現にもかかわらず、コロナウイルスの「最も懸念される」株であると、WHO当局者は9/7に発表した。
WHOのマイク・ライアン博士は、「新しいウイルスが出現した場合、"ベスト・オブ・クラス "のウイルスに対抗できなければならないが、今のところそれはデルタである」と述べた。

www.cnbc.com

 

東大医科学研の研究結果

9/8に東大医科学研究所の佐藤佳准教授のチームは、ワクチンで作られるであろう中和抗体はほぼ効かないとの研究結果をbioRxivに発表した。

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出典:Twitter The Sato Lab (Kei Sato)

https://twitter.com/SystemsVirology/status/1435369160968577024

この研究成果のプレプリント『療養者血清およびワクチン血清によるSARS-CoV-2 ミュー変異株の非効果的な中和』は以下のもので、概要をDeepL翻訳した。

www.biorxiv.org

2021年8月30日、WHOはSARS-CoV-2 Mu亜種(B.1.621系統)を注目の新亜種に分類しました。WHOは、新たなSARS-CoV-2亜種の出現に対して、「ウイルスの特性と公衆衛生上のリスクを比較評価する」ことを主な行動と定義しています(https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/)。ここでは、Mu亜種がCOVID-19回復者およびBNT162b2ワクチン接種者の血清に対して高い耐性を持つことを示している。異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を直接比較したところ、Muスパイクは、現在認識されている他のすべての注目すべき(VOI)および懸念すべき(VOC)バリアントよりも、血清を介した中和に対して耐性があることが明らかになった。これには、現在までに回復期およびワクチン接種を受けた血清に対して最も耐性のあるバリアントであることが示唆されているBetaバリアント(B.1.351)も含まれます(例:Collier et al, Nature, 2021; Wang et al, Nature, 2021)。新たに出現した亜種によるブレイクスルー感染は、現在のCOVID-19パンデミックの際に大きな懸念となっているため(Bergwerk et al.、NEJM、2021年)、今回の調査結果は公衆衛生上の重要な関心事であると考えています。今回の結果は、ワクチンを接種した人、過去に感染した人、未感染の人のいずれに対しても、Muバリアントがもたらすリスクをよりよく評価するのに役立つでしょう。

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出典:Ineffective neutralization of the SARS-CoV-2 Mu variant by convalescent and vaccine sera (bioRxiv; sep 8, 2021) オリジナル図に翻訳を加えた。


このプレプリントの図より、ミュー株については中和抗体価が一番低いことが示されている。従来株は武漢株であるが、Cのワクチン接種者の血清から中和抗体価が7.6分の1となっている。BのCOVID-19罹患者の血清の中和抗体価は従来株の12.4分の1ということである。Twitterでこの研究成果の見方は以下のようにある。

BNT162b2ワクチン(ファイザー社製)は、従来株(武漢株)のスパイクたんぱく質をベースに設計されたmRNAワクチンであるので、この研究結果で示すように、ミュー株のみならずスパイクたんぱく質の変異で免疫逃避をする働きがあるとされる南アフリカのベータ株もほかの変異株と比較して中和抗体価が低い。現在蔓延中のデルタ株においては、約3分の1と中和抗体価が低くなっているが、それよりも低いことが示されている。

免疫については、以下の頁で説明されている。

www.macrophi.co.jp

免疫には自然免疫と獲得免疫がある。獲得免疫には細胞性免疫と液性免疫がある。ワクチンで生成される抗体は液性免疫由来である。ということで、免疫の手段を複数準備しておくことが今できることではないかと思う。睡眠をしっかりとる。ストレスを解消するなど、体内の免疫力を上げることが感染の確率を下げることになるのではないだろうか。ほかにはマスク、室内の換気など、ウイルスが含まれている可能性がある飛沫やエアロゾルから避ける対策をして確率を下げていく。これが基本スタンスで、2,3年は続くということを想定していった方がよいように思われる。

この記事を投稿した時期は、新規感染者の最大値のほぼ半分程度まで提言してきた。名ばかり緊急事態宣言とは言えども、自粛の積み重ねで減少してきたことと考えてもよいと思う。このまま減少して季節が秋から冬になりかかるときに、どのようになっているかを想定してできる対策をしていきたい。

 

 

2回目のワクチン接種後。懲り懲りだ(泣)

いやー、副反応は出るものなのですね。私の場合は注射針挿入場所の疼痛、発熱。さらには筋肉痛である。副反応は個人差による。副反応は厚生労働省のホームページでもどういったものがあるかを示している。

www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp

机の上の勉強ではなく体感すると副反応についてよく理解できるわけだが、正直副反応はこりごりだ。接種時50代前半男性の一例として、以下に記録を残そう。

疼痛(腕の痛み)

  • 接種してから4時間後に痛みを認めた。注射針挿入個所を指で2分ほど接種直後に抑えたが、痛いものは痛いというところだ。
  • 接種日の夜、自動車で帰宅したがステアリングを回したり、シフトレバーを動かす分には不自由は感じなかった。
  • 接種した左腕を下に寝ることはせず、左腕をかばうように就寝した。痛みで起きることはなかったが、別のことで夜中に目を覚ましてしまった。
  • 接種翌日、自動車で通勤したが、運転は問題なかった。
  • 業務で、キーボードを入力する、マウスを動かすことは問題なく操作できた。

1回目接種で要領がわかっていることもあり、針が刺さった腕の場所の痛みはそのうちなくなるだろうと期待して気持ち的には困ることはないと思う。

発熱

接種日(9/7)とその翌日(9/8)の体温の推移をグラフにした。

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  • 接種は9/7の11:40頃。発熱は接種日の夜になると想定していたが全然そういう気配はなかった。
  • 接種翌日。出社後37度を超えていたので、30分間隔で測定してみた。正午前までは37度前半。
  • 接種翌日の午後は37度台後半を推移し、インフルエンザにり患したようなだるさは全然なく、比較的頭は冴えていた。
  • 接種翌日の夕方、会社の非接触体温計で額で測ると37度2分。首で測ると37度8分で表示が緑ではなく黄色くなって、いつもと違う音が鳴っていた。
  • グラフには書いていないが、9/8の22時頃は38度2分。9/9の1時頃は37度9分、4時頃は37度2分と熱が引いていった。
  • 風邪ではない発熱ということで、なんか不思議な感じがした。
  • だるさを伴って動けないとなれば、鎮痛剤(アセトアミノフェン)を服用することも考えていたけれど、幸いそこまで至らなかった。

筋肉痛

  • 接種日はなんともなかった。
  • 接種翌日は、太腿(ふともも)の筋肉痛が午前中から認められ、発熱よりも筋肉痛の影響が体調を悪くしているようだった。こういう時は、スリムスーツのスラックスではなく、ゆったりとしたスラックスを履いておくべきだった。
  • 太腿も熱を持っているらしく、靴をまともに履いていられなかった。靴下を脱いで裸足で自席で仕事をしていた。移動はさすがに裸足はよろしくないので、靴下履いて靴を履いて、履いたり脱いだりの繰り返しだった。
  • 接種翌日の午後は、大腿の他に上腕も筋肉痛が認められた。運転はできたので普通に帰宅した。

とりあえずこれで、武漢株をベースとした抗体が生成されるわけだが、この抗体に依存することなく、罹患しないように心がけることが大事だ。昨年に比べれば今年はワクチンという手段を得ることができた。治療においても、抗体カクテル療法ができるようになった。ただ抗体カクテル療法は点滴なので、とてもお手軽ではない。年末に経口抗ウイルス薬が承認申請の段階になるかもしれない。

あと、かんわいんちょーさんのYouTubeでのコンテンツで、新型コロナウイルス感染症の治療薬に係る治験の話が紹介されていた。治療薬は軽症者を対象とするものである。

www.mhlw.go.jp

デルタ株の怪。

今回は短いタイトルで。検索していたら気になる記事にたどり着いた。イスラエルはワクチン接種率が高いのに感染者が増えている状況が気になっていたが、その『何故』にこたえてくれるかもしれない。発端はイギリスはすでにピークアウトしたのに、半減した後緩やかに新規感染者が増えている状況であることをずっとチェックしていて、その次にイスラエルはどうかなと思い、検索で『イスラエル』と入力したら、以下の記事にたどり着いたわけである。

www.data-max.co.jp

記事の中で、イギリスの感染状況について以下にまとめられていた。イスラエルについて知ろうとしたらイギリスについて説明されていた。

一方、海外のワクチン接種先進国では「不都合な真実」に直面したために、さまざまな研究が進むようになっている。たとえば、イギリス政府の最新の発表によれば、「デルタ株による死者のうち、3分の2はワクチン接種者であった。本年2月から8月の間にデルタ株に感染し死亡した事例は742件であったが、そのうち、402人は2度の接種を完了しており、79人は1回の接種を終えていた。253人はまったくワクチンを接種していなかった」とのこと。

 言い換えれば、ワクチンを接種していた方がデルタ株に感染すれば死亡する確率が高いというわけだ。イギリス政府の公式報告が「ワクチンの予防効果は宣伝されているほどではない」と認めているのである。また、副反応の被害ははるかに深刻さを深めている模様で、何のための予防接種なのか疑問を呈する声が日増しに大きくなっている。ワクチンへの過度の期待は要注意ということだ。

イスラエルについては、こう述べていた。

さらにはイスラエルの事例は注目に値するだろう。同国ではすでに国民の80%以上が2度の接種を終えており、世界でも最も感染予防が進んでいると見られていた。ところが、イスラエルでは7月から8月にかけてコロナの重篤患者が急拡大しており、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)ではアメリカ国民に対して「イスラエルへの渡航禁止」を発令することになったほどである。

イスラエル保健省は「ファイザーのワクチンの予防効果は39%に低下している」と公表。

同国のハビブ医師曰く「入院患者が急増している。入院患者の90%は2度のワクチン接種を済ませていた。今やワクチンの効果はないに等しい。重傷者患者への十分な対応ができなくなりつつある」。実に由々しい事態といえるだろう。

これはもしかしたら、ADE(抗体依存性増強)の仕業ではないかと思ってしまった。しかしこの記事にはADEが原因であるとは一言も述べていなかった。今度は、『ADE』と『デルタ株』で検索してみた。そうしたらnoteの投稿にたどり着いた。

note.com

この記事で引用されているレター(letter to the editor)は以下のものであった。

Infection-enhancing anti-SARS-CoV-2 antibodies recognize both the original Wuhan/D614G strain and Delta variants. A potential risk for mass vaccination?(翻訳:感染を促進する抗SARS-CoV-2抗体は、オリジナルの武漢/D614G株とDelta株の両方を認識します。集団予防接種の潜在的リスク?)

https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext

ハイライト
  • 症状のあるCovid-19では、感染を増強する抗体が検出されています。
  • 抗体依存性増強(ADE)は、ワクチンに対する潜在的な懸念である。
  • エンハンスメント抗体は、Wuhan株とdelta変種の両方を認識する。
  • delta 変異体の ADE は、現在のワクチンの潜在的なリスクである。
  • ADEエピトープを欠いたワクチン製剤が提案されている。
概要
抗体依存性免疫増強(ADE)は、ワクチン戦略における安全性の懸念である。最近の発表では、Liら(Cell 184 :4203-4219, 2021)が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)に対する感染促進抗体は、in vitroではウイルスの感染を促進するが、in vivoでは促進しないことを報告している。しかし、この研究はオリジナルのWuhan/D614G株を用いて行われたものである。
現在、Covid-19パンデミックではDelta変異体が主流となっているため、これらの変異体のNTDと促進抗体の相互作用を解析した。分子モデリングの手法を用いて、エンハンシング抗体は、Wuhan/D614GのNTDよりもDeltaバリアントに対して高い親和性を持つことを示した。また、エンハンシング抗体は、NTDを脂質ラフトマイクロドメインに固定することで、スパイク三量体の宿主細胞膜への結合を強化することを示した。
この安定化メカニズムは、受容体結合ドメインの脱マスキングを引き起こす構造変化を促進する可能性がある。NTDは中和抗体の標的にもなっていることから、今回のデータは、ワクチン接種を受けた人の中和抗体と促進抗体のバランスは、オリジナルのWuhan/D614G株では中和に有利であることを示唆している。しかし、Delta変異体の場合、中和抗体はスパイクタンパクに対する親和性が低下しているのに対し、促進抗体は顕著に親和性が上昇しています。
したがって、オリジナルの武漢株スパイク配列に基づくワクチン(mRNAまたはウイルスベクター)を接種している人にとっては、ADEが懸念されます。このような状況下では、構造的に保存されたADE関連エピトープを欠くスパイクタンパク製剤を用いた第二世代のワクチンを検討すべきである。

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。

本文には2つの図があるが、1つ目の図はウイルスの分子構造と感染増強抗体の相互作用の影響力について言及されていて、デルタ株の方がその相互作用の影響力が大きいことが説明されていた。それに伴い、2つ目の図は下図のように、天秤の絵に例えて、従来株(Wuhan/D614G)は、ワクチンで生成される中和抗体の方がADEよりも優位であるのに対して、デルタ株(Delta variant)はその逆であることが示されていた。

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出典:Infection-enhancing anti-SARS-CoV-2 antibodies recognize both the original Wuhan/D614G strain and Delta variants. A potential risk for mass vaccination?(翻訳:感染を促進する抗SARS-CoV-2抗体は、オリジナルの武漢/D614G株とDelta株の両方を認識します。集団予防接種の潜在的リスク?)のFigure.2

https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(21)00392-3/fulltext

 

イギリスやイスラエルの事例では、上述のような説明が成り立つのだけれど、日本においてはそうした傾向はなく、むしろワクチンの効果で新規感染者対死亡者あるいは重症者の割合が以前よりも小さくなっている。デルタ株の感染がインドが終息してから是懐柔に始まった時期を一緒に考えるとこれら2国と日本の違いはワクチンを接種した時期である。あとはマスクを積極的に着用したのかどうかというところなのかと思うが、デルタ株は怪である。『犯人はADEだ』とは断定するには至っておらず、現時点ではこういう可能性があり、このように考えられると認識しておいた方がよいと思う。ひょっとしたら、1年後は全然違っている展開になることだってあり得るので。

 

 

ワクチン接種して思ったこと(2回目)

懸念事例の理解は大事

私がワクチン接種で懸念していることはよく言われるアナフィラキシーではない。非常にまれであるが重篤な状況に急変し命に関わる状況になってしまうことである。例えばSARS-CoV-2ワクチンによる免疫性血小板減少症の合併症とか、心筋炎などである。いずれもDr. Mike HansenのYouTubeの内容である。この免疫性血小板減少症の合併症については、ワクチン接種後3日経過後死亡してしまった。衝撃的な内容であったが、かんわいんちょーさんのYouTubeで突発性血小板減少性紫斑症なる内容となにか類似しているのではないかと思った。

アメリカの事例を見ると日本の状況と異なることを垣間見る。Dr.Mike HansenのそのYouTubeでは死亡後2週間程度でワクチンによる死亡診断書が出ていることだ。日本では1千件程ワクチン接種後死亡事例があって未だに因果関係を調査している状況である。医学レベルが根本的に違うのか、検死レベルが違うのか、死因の特定がそもそもできないのか。こんなことを比較してどうなんだということもあるけれど、ワクチンが直接的な原因であることを避けている傾向が否めない。こうしたリスクがあることを承知したうえで、2回目の接種を受けてきた。

 

接種直後は

発熱もなく大丈夫そう。11時半に受付して、11時40分頃接種。その後はいたって普通である。とりあえず、体温は気づいたときに測定しておく。午前中は36度台前半。13時時点でも36度4分と、気づくような変化は認められなかった。

接種後2分程度、揉まずに抑えるとの注意書きを1回目はみていなかった。今回はその指示に従った。

 

気になる抗体価の推移

1週間前に思ったことを述べてみたけれど、これで大丈夫だという思いは全然しない。罹患しても重症化しない程度だということを認識しながら、抗体がピークになると思われる2週間を待つとしよう。

こないだ探した自己採血の抗体価のグラフはその後も継続的に測定されていた。すごいですね。その方のデータが見ることができて感謝。2回目接種後1週間ほど経過すると抗体価が最大になることがわかる。縦軸は6.5マスでピークなのでその半分に当たる3マスちょいのところは、ピークから3.5週間後というところだ。1か月経過しないのに半減してしまうこともあると見た方がいいのかもしれない。ピークから3か月程経過すると、1回接種後の抗体価となっている。抗体ができていればその時点ではゼロにはなっていないことも分かった。

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出典:叢雲くすり(創薬ちゃん) Twitter

霞雲くすり(創薬ちゃん)さんのように採血できる環境ではないので、自身がどうなのかはわからない。これまで学んだことからすれば、この抗体を当てにすることなく感染予防の対策をとり続けていくことが大切だと思っている。

予防の一つは空気感染のリスクを減らすこと

私が一番気にしていることはエアロゾル感染である。先日LANCET誌に書いてある内容を投稿したけれど、エアロゾルは3時間程度浮遊してウイルスの半減期は1.1時間と説明されていた。エアロゾル感染について詳細にScience誌に掲載されていたのを最近知ったので、それはまたの機会にその内容をかいつまんでアップする予定。

密集フェスで陽性者が出た

マスクは不織布推奨とのことであるが、飛沫を拡散するリスクは低くすることができる。ただしエアロゾルは完全スルーするので換気に気を付けて感染リスクを低くする必要がある。物議をかもした愛知県の野外フェス。

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出典:「密集フェス」参加の消防士男性が新型コロナ感染 無料PCR検査でも2人が陽性 愛知- 名古屋テレビ【メ~テレ】

この事例から何を学ぶか

野外であっても密であれば感染する事例だ。マスクはしていなく盛り上がって声を出していれば風が無く空気の流れが無ければある程度エアロゾルが滞留するということだろうね。このフェスが直接関係しているかどうかは断言できないが、参加して3日経過後に風邪と似た症状が出たということである。

密集している場所は、たとえ外であっても感染リスクがあるということをよく認識したほうが良いということを学べるのではないだろうか。

全国の新規感染者性者の状況 (2021/9/6)

今ならば、ピークアウトしたようだと言ってよいかもしれない。全国地図の塗り絵を作っていて、色が1段階下の方になる道府県が複数あったので。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

週ごとの新規感染者数(1日当たり)の棒フラフを見ても、ピークアウトしており、全国平均よりも東京都の方は減少傾向が早い。それもそうだ、増える時も早かったのだから。一方、愛知県は減少傾向は微減といったところだ。これは東京都の逆で増えるときは比較的遅かったからだ。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

東京都の全国に占める割合も、9/5時点で14.36%と第5波の前の水準に戻ってきた。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

東京都と愛知県で全国平均と比較して、減少傾向が異なることを述べたが、実効再生産数の推移からもそのような傾向が言えるだろう。9/5時点で全国平均は0.813。東京都に至っては0.754。愛知県は0.961でようやく1を下回った。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

なお、実効再生産数を関東圏、東海圏、関西圏では以下のようになる。ここで掲載した都府県については9/5時点で実行再生産数は1を下回っていた。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス (2021/9/5)

新規感染者数はこれから減少していくだろうが、重症者数と死者数の関係はどうだろうと、グラフにしてその傾向を見ることにした。青線は新規感染者数で、赤線は死者数であるが、細い線は1日ごとの推移で変動が大きいこともあり、太い線で7日間の移動平均(現在の日と過去3日分と未来3日分の平均)してみてみた。縦軸の値は左右それぞれに分けたが、新規感染者数の1/100が死亡者数となっている。如何に第5波は大きいことがよくわかったが、2021年1月頃の第3波と2021年5月頃の第4波と比べて、新規感染者数に比べて死者数は少ない傾向にある。これはひとえに高齢者先行のワクチン接種による重症化リスクの低減が功を奏しているのかもしれないし、適切な治療法が確立してきたのかもしれない。ただ、新規感染者数の減少が始まっても、重症者数、死者数は増加傾向にあるので今後も見ていく。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス

今度は、重症者数と死者数の推移についてを示してみた。紫色の線が重症者数で、赤色の線が死者数である。重症者数は厚生労働省のサイトからデータを入手したが、移動平均はしていない。縦軸の値は左右それぞれに分けたが、重症者数の1/10が死亡者数となっている。このグラフからも、重症者数に対して死者数が第3波、第4波よりも少ないことが判った。ただこれも、自宅療養者が多く重症化が早いとされる変異株の動向からも注視していく必要がある推移だと思う。

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出典:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス 、 厚生労働省

最後に、私が居住する市の週ごとの感染者数の状況であるが、これもピークアウトしている。ただ、1つ前の週と比べて違うことは各年齢層ごとある多からず少なからず各年齢層に新規感染者数がいることだ。20代(ピンク)が半減していることがまずわかるし、10代(茶色)と10歳未満(灰色)は先週と同等感染者がいる。

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デルタ変異株の感染力が強い理由(2) 結合部分の帯電力が大きくなった。

 

SARS-CoV-2 B.1.617 インドの亜種。

静電ポテンシャルの変化が高い感染率の原因となる?

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.27210

 

上記URLの論文は、SARS-CoV-2のスパイクたんぱく質のACE2結合部分がより正電荷を帯電し、負電荷のACE2によりくっつきやすくなったことを表していることを述べている。

概要は以下の通り。

  • B.1.617+系統は、G/452R.V3としても知られており、現在WHOではギリシャ文字のδとκで表記されていますが、最近報告された調査中のSARS-CoV-2の亜種で、2020年10月にインドで初めて確認されました。
  • 2021年5月現在、B.1.617.1(κ)、B.1.617.2(δ)、B.1.617.3と表示された3つのサブリネージュがすでに確認されており、現在のパンデミックに与える潜在的な影響が調査されています。この変異体には13のアミノ酸の変化があり、そのうち3つはスパイクタンパクにあり、現在特に懸念されています。E484Q、L452R、P681Rである。
  • この変異は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の表面静電ポテンシャル(EP)を著しく変化させることで特徴づけられる。特にB.1.617.2 (δ)系統では、中性または負に帯電したアミノ酸が正に帯電したアミノ酸に複数回置換されており、RBD-EPの向上が顕著に見られた。
  • このEPの変化は、B.1.617+のRBDと負電荷を帯びたACE2との相互作用を促進し、ウイルスの感染力を増大させる可能性があると考えられる。

 

私がここで認識できたことは、SARS-CoV-2がくっつくACE2は負の電荷を帯電していて、SARS-CoV-2のスパイクたんぱく質は正の電荷を帯電していて引き寄せられて結合すること。この論文の図1には、負電荷を赤、正電荷を青で色によってその強さを示したスパイクたんぱく質の模式図が掲載されている。

左側はCOVID-19が発生した2020年初頭のものであるが、右側の4つが変異株でそのうち上の2つがインド由来のカッパ株、デルタ株を示している。図のオリジナルの説明にもあるが、変異した部位には円とラベルが表示されていて、赤い矢印は正の電位が増加したことを示している。

 

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出典:SARS-CoV-2 B.1.617 Indian variants: Are electrostatic potential changes responsible for a higher transmission rate? Fifgure 1 (journal of medical virology)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.27210

(翻訳)野生型スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)と変異型スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)の比較。タンパク質の表面は、静電ポテンシャルに応じて色分けされている。カラースケールは-5 kT/e(赤)から+5 kT/e(青)の範囲で、野生型RBDの下のバーで示されている。変異部位の位置は、円と添付のラベルで示す。赤い矢印は、RBDのインドの変異体で正の電位が増加した領域を示す。

この図を見て思ったことは、鍵と鍵穴があっているかどうか結合することも関係するけれど、双方が異なる電荷を持っていてそれがより強くなれば、引き寄せられる力が大きくなって簡単に結合する。感染する確率が高くなるということである。

下敷きを頭の上でこすって静電気を発生させて髪の毛が下敷きにくっ付くという話ではないけれど、スパイクたんぱく質が変異するということは電荷エネルギーが変化するということを教えてくれた研究成果だと思う。