kennyheadway's thinking

こちらは日々思うこと、COVID-19について思うこと述べていくことになりそうかな。

デルタ変異株がイギリスで広まった理由。BBCから

デルタ変異株、なぜイギリスでこれほど広まったのか

BBCのビデオクリップ(2021/6/21) でいくつか学ぶべきことがある。

 

www.youtube.com

 

日本語字幕の文字をテキストに起こした。文字数は今回は3千文字程度だ。YouTubeを見るもよし、私が打った文字とスクショを見るもよし。Chek it our !

 

 

これはデルタ変異株の物語です。イギリスにどうやって入りジョンソン首相の計画をどう遅らせたか。

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「6月21日に予定したロックダウン緩和の第4段階に移行するための4要件をすべて満たしたとは言い難いため、あと少しだけ待つのが分別のある対応だと思います。」

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発端に戻りましょう。昨年10月、インドで新しい変異株が検知されました。

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それから6か月後の4月、インドの感染者数は急増していました。いくつかの変異株が懸念されていました。そのうちひとつはB.1.617.2系統と呼ばれました。これが「デルタ株」です。国際的に注目を集めていて、世界保健機関(WHO)は4月4日「注目すべき変異株」に指定しました。 4月9日にはジョンソン政権が「レッドリスト」対象国を増やしました。最も厳しい渡航制限の対象国です。

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こちらがその発表文です。「フィリピン、パキスタンケニアおよびバングラディッシュを4月9日から」「イングランドレッドリストに加える」という内容でした。続いて「この追加規制は南アフリカやブラジルで……」「最初に特定されたような新変異株がイングランドに入るリスクを減らす……」「一助になる」としています。

デルタ株への言及はありません。インドへの言及もありません。となると「なぜ?」と聞きたくなります。政治がらみだという説明もあり得ます。首相は4月末に予定していたインド訪問を中止したくなかったのだと。

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英紙サンデータイムズは数週間後にこう報じました。「ブレクジット後の重要な通商交渉を前にジョンソン氏は……」「インド関係に波風を立てたくなかったらしい」と。「首相のインド訪問は役に立つと期待されていた」と。政府はこの言い分をまったく受け付けていませんが、インド訪問中止を求める圧力は高まっていました。

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著名な公衆衛生研究者は、インドがレッドリストに含まれていないのは「正直って狂っている」と批判しました。

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政府の考え方についてはハンコック保健相の5月の発現から少し明らかになりました。

パキスタンレッドリストに加えた時、あとバングラデシュも。両国から訪れる人の陽性率はインドからの入国者の3倍でした。それが当時の決定理由です」

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しかし公表されているセーフデータはこの発言と異なります。これは3月末から4月初めにかけてイギリスを訪れた人の陽性率です。インドはバングラディシュより高くパキスタンに近い。

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保健相は政府が自体の全容を把握していなかったとも言いました。

「当時はそのデータを入手していませんでした。というのも感染が確認される日のデータと検体のゲノム解析の結果が得られる日との間には、かなりの時間差があるので、得ているデータをもとに行動しなくてはなりません。」

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保健相は解析の話をしています。個々の変異株を特定するための作業です。けれどもその情報が無くても、インドからのニュースは歴然としていました。4月半ばにもなると人口規模の違いを考慮したとしても、インドの1日の新規感染者数はバングラデシュパキスタンをはるかに上回っていました。英政府はこれはインドの方がたくさん検査をしていたことも一因だと言いますが。当時ケント株や南アフリカ株ブラジル株と呼ばれていた変異株の感染がインドで拡大していると確実に認識していました。そしてインドでは当時感染急増が深刻化していました。そのため数日のうちに政府は方針を変えました。

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4月19日政府はこう発表しました。「4月23日午前4時よりインドをイングランドレッドリストに加える」と。「インドとイギリスの間の渡航者数がきわめて多い」と。政府は指摘しました。両国間の渡航が4月に多かったのは確かです。

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サンデータイムズは4月初めから第3週までの間にインドから2万人がイギリスに入国したと推計しています。

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しかしジョンソン首相はこのほどまたしても政府の判断を弁護しました。

「議長 私たちがインドをレッドリストに加えたのは4月23日でした。そしてデルタ変異株が特定されたのは4月28日のことです。」

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これはどれもその通りです。ただしインドの危機に変異株が関わっていることは4月のもっと早い時点で知られていました。そして4月半ばには大勢が首相に対応するよう呼び掛けていました。この時の政府判断の正誤がどうだったにせよ、ジョンソン氏の行動には決まったパターンがあり、この時もそのパターンに沿っていました。

パンデミック開始当初に首相は欧州の多くの国より遅れてロックダウンを実施しました。昨年秋には政府の科学顧問の助言よりも遅くロックダウンを開始しました。12月にはクリスマス時期の規制強化を求める意見にいったん抵抗した後考えを変えました。そして今回も対応に時間をかけました。

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その遅れが何にどう影響したのか、それが問題です。5月半ばになると野党はこう批判していました。「インドをレッドリストに加えるべきでした。パキスタンバングラデシュと同時に。あの時から3週間の間に何千人もの人がインドから帰国し、その中にはおそらく新しい変異株の保有者が何百人もいたでしょう。

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しかしそれはつじつまが合うのでしょうか?4月の決定を今の状況と結びつけられるのか。現在イングランドの新規感染者の9割超がデルタ株に感染しています。元政府顧問は次のように話しています。「私たちは現在第3波の初期の最中にあります。デルタ株が原因です。1日の感染者は平均7,000人で、倍加時間は約1週間です。」

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そしてこちらでは現在の政府科学顧問が、レッドリスト決定の影響についてこう話しています。「このインドのデルタ変異株は現在世界中でかなり一般的なので、いずれはイギリスに入っていたはずですが、その時期はもっと後のことだったかもしれない。

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そして今はウイルスとワクチンが競争している状態なので、もっと大勢がワクチン接種を済ませている時点で、この変異株が国内に入ってきたとしたら、このような形で増えたりはしなかったかもしれない。」

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つまりタイミングはある程度関係したというわけです。けれどもそれが全てではありません。この日付を見てください。アラブ首長国連邦は4月22日にインドからの入国制限を強化し、フランスは4月24日に、アメリカは5月4日に同様にしました。繰り返しますがイギリスが入国を制限したのは4月23日でした。各国から大きくずれていたわけではありません。もっと広く見るとWHOによるとデルタ株は60以上の国に入っています。

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ではなぜイギリスの被害が特に大きいのでしょう。著名な遺伝学者のジェフリー・バレット博士のこちらの説明は参考になります。博士は英紙インディペンデントの記事で、「感染力の高い変異株でも1件だけならそのまましぼんで消えて、大きな感染拡大に至らない可能性がかなりある。それが100件や500件あるいは1000件と入ってくる場合、そのいくつかがやがて大規模な感染拡大の種になるのを避けるのは非常に難しい」と言ってます。

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こうした指摘はレッドリスト決定のタイミングをめぐり、今も続く議論に関わってきます。

この議論は緊迫の度合いを増しています。デルタ株の問題がますます大きくなっているので。しかも変異株はこれで終わらない。科学者たちはそういっています。

まぎれもなく半年後には確実に別の変異株について同じ会話をしているはずです。

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そして各国政府が変異株をどう扱うかによって、COVID-19が私たちの生活をどれほど乱すかが大きく変わります。デルタ株でそれはもう経験済です。デルタ株はどうせいずれはイギリスに到着したはずですが、イングランドの行動規制がなぜ6月21日に予定通り緩和されないのか理由を探る際には、4月の政府判断が参考になります。

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学ぶべきことがいくつもあった。ウイルス耐性変異株。MRSAじゃないけれど、耐性を持った時にどう対処するか、COVID-19以外からでも学ぶべきことがあるかもしれない。