kennyheadway's thinking

こちらは日々思うこと、COVID-19について思うこと述べていくことになりそうかな。

デルタ変異株の感染力が強い理由(2) 結合部分の帯電力が大きくなった。

 

SARS-CoV-2 B.1.617 インドの亜種。

静電ポテンシャルの変化が高い感染率の原因となる?

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.27210

 

上記URLの論文は、SARS-CoV-2のスパイクたんぱく質のACE2結合部分がより正電荷を帯電し、負電荷のACE2によりくっつきやすくなったことを表していることを述べている。

概要は以下の通り。

  • B.1.617+系統は、G/452R.V3としても知られており、現在WHOではギリシャ文字のδとκで表記されていますが、最近報告された調査中のSARS-CoV-2の亜種で、2020年10月にインドで初めて確認されました。
  • 2021年5月現在、B.1.617.1(κ)、B.1.617.2(δ)、B.1.617.3と表示された3つのサブリネージュがすでに確認されており、現在のパンデミックに与える潜在的な影響が調査されています。この変異体には13のアミノ酸の変化があり、そのうち3つはスパイクタンパクにあり、現在特に懸念されています。E484Q、L452R、P681Rである。
  • この変異は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の表面静電ポテンシャル(EP)を著しく変化させることで特徴づけられる。特にB.1.617.2 (δ)系統では、中性または負に帯電したアミノ酸が正に帯電したアミノ酸に複数回置換されており、RBD-EPの向上が顕著に見られた。
  • このEPの変化は、B.1.617+のRBDと負電荷を帯びたACE2との相互作用を促進し、ウイルスの感染力を増大させる可能性があると考えられる。

 

私がここで認識できたことは、SARS-CoV-2がくっつくACE2は負の電荷を帯電していて、SARS-CoV-2のスパイクたんぱく質は正の電荷を帯電していて引き寄せられて結合すること。この論文の図1には、負電荷を赤、正電荷を青で色によってその強さを示したスパイクたんぱく質の模式図が掲載されている。

左側はCOVID-19が発生した2020年初頭のものであるが、右側の4つが変異株でそのうち上の2つがインド由来のカッパ株、デルタ株を示している。図のオリジナルの説明にもあるが、変異した部位には円とラベルが表示されていて、赤い矢印は正の電位が増加したことを示している。

 

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出典:SARS-CoV-2 B.1.617 Indian variants: Are electrostatic potential changes responsible for a higher transmission rate? Fifgure 1 (journal of medical virology)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.27210

(翻訳)野生型スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)と変異型スパイクの受容体結合ドメイン(RBD)の比較。タンパク質の表面は、静電ポテンシャルに応じて色分けされている。カラースケールは-5 kT/e(赤)から+5 kT/e(青)の範囲で、野生型RBDの下のバーで示されている。変異部位の位置は、円と添付のラベルで示す。赤い矢印は、RBDのインドの変異体で正の電位が増加した領域を示す。

この図を見て思ったことは、鍵と鍵穴があっているかどうか結合することも関係するけれど、双方が異なる電荷を持っていてそれがより強くなれば、引き寄せられる力が大きくなって簡単に結合する。感染する確率が高くなるということである。

下敷きを頭の上でこすって静電気を発生させて髪の毛が下敷きにくっ付くという話ではないけれど、スパイクたんぱく質が変異するということは電荷エネルギーが変化するということを教えてくれた研究成果だと思う。