kennyheadway's thinking

こちらは日々思うこと、COVID-19について思うこと述べていくことになりそうかな。

次に備えるには。2021年9月時点での考察

新型コロナウイルスSARS-CoV-2による感染症COVID-19のデルタ変異株で蔓延した第5波はピークアウトしたが重症者数の減少はこれから時間を要するだろう。9/13に掲載したグラフにちょっと手を加えて傾向を見てみよう。

新規感染者数と死亡者数の関係である。毎日の報告でギザギザしているため、7日間の移動平均(過去3日、現在、未来3日)としている。見るからに直近の第5波の新規感染者数が非常に多い。

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重症者数と死者数の関係をみても、第5波は重症者数が多い。第3波、第4波と比べると重傷者が多い割には死亡者数が現時点では多くはない傾向がみられる。ただ、重症者数が下降している割には死亡者数は下降傾向にまだ転じているとは判断できないので、しばらく動向を注視していく状況が続きそうだ。

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なお、死亡者数が唐突に多い日が2日あるが、NHKの特設サイト新型コロナウイルスでは以下のような説明があった。

  • 埼玉県は2020年6月19日、「死亡した人の計上方法を、国の示した基準をもとに見直した結果、死亡した感染者が13人増えた」と発表しました。それぞれの死亡日が明らかになっていないため、上記のグラフでは2020年6月19日に表示しています。

  • 兵庫県は2021年5月18日、「129人の死亡が確認された」と発表しました。このうち121人は、神戸市がこれまで計上していなかった人をまとめて発表したものです。121人が亡くなったのは、2021年3月26日から5月17日までの1か月半余りの期間だとしています。

なお、このグラフでは波の最大値の値だけに注目しているが、本来であれば波の部分を期間で区切って積分した値に注目した方がより適切にかすを評価できると思うが、こうした場合、波がくっついていることもありどこで分けるかはむずかしい。

もう一つ、この3つの指標(新規感染者数、死者数、重症者数)の最大値を1にして正規か下グラフを書いてみると以下のようになる。こうしてみると、第5波は新規感染者数が多い割に死亡者数が少ないこと、第4波では相対的に新規感染者数よりも死亡者数、重症者数が多いが第5波では重症者数を比較的少ないことが判る。

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ワクチン接種による予防効果、重症化防止効果が関係していると思うが、この冬に向けては、より治療の選択肢が多くなることを望みたい。抗体カクテル療法といっても、点滴するわけだし、これを自宅療養というのはなかなか難しいところがある。早く抗ウイルス薬が承認されることを期待している。

今日は3つ思うことを述べてみたいと思う。

新たな変異株は出てくるか?

恐らく出てくるだろうと予想している。ただそれが主流になるかどうかは諸説いろいろある。ワクチン耐性変異株が今後出てくるかもしれないといわれているが、現在のデルタ株が一部耐性を持っているのではないかとさえ思ったりする。

下図は、9/13に投稿されたプレプリントの図で、メジャーな10系統をラベリングしてある。例えば、右上の大きな赤い円のB.1.617.2はデルタ株、その左下の二回り小さな丸のP.1はガンマ株、その左の一回り大きなB.1.1.7はアルファ株といった風にである。このプレプリントでは200万本以上のSARS-CoV-2のゲノム解析で、どの変異が伝染性を促進するかを明らかにした。さらに多項混合モデルを用いて、異なるSARS-CoV-2系統の相対的な伝染性の原因となる変異を推測した。

本来であればこの図はプレプリント本文にもあるように、どのスパイク蛋白質が変異して、それがどの程度感染力が高いかを考察しながら見ていくと思うのだけれど、ここでは時期的にどの程度伝染性が高い変異株が出現したかを見ていこうと思う。結構この図を見ると北半球で冬から春の時期が大きな丸だという印象がある。

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出典:Analysis of 2.1 million SARS-CoV-2 genomes identifies mutations
associated with transmissibility, medRxiv preprint September 13, 2021

210万人のSARS-CoV-2のゲノムを解析し、感染性に関わる変異を特定

赤い丸は、懸念される変異株(VOC)であるが、出現時期は日本で言うと冬から春の季節が多いようだ。2020年の6月頃は、B.1.351系統のベータ株が出現しているがそれはさほど大きな円形ではなさそうだ。2020年初頭は、VOCとかVOIというラベルが無かったので、グレーの丸であるが、2020年1月から4月にかけて比較的大きな丸が存在する。こうしたことからも、2021年の秋冬は何か出現することを想定する。少なくとも現時点ではデルタ株が他の株よりも優勢ではびこっている。デルタ株がなくなったらどういう株がはっきりするか、注視する必要があるだろう。

 

インフルエンザはこの冬、流行するか?

2020年初頭、2021年初頭とも、インフルエンザの流行したという状況ではなかった。ウイルス干渉(あるウイルスが流行すると他のウイルスが流行しないによって新型コロナウイルス感染症が流行しているとインフルエンザが流行しないということなのだろうか。

新型コロナウイルス感染症(デルタ変異株)は10月下旬が新規感染者数が底になるのではないかと思っている。その頃には重症者数も減少してようやく医療現場の逼迫程度がだいぶ緩和されるのではないかと思っている(願っている)。10月下旬と言っているのは、そこから大体2か月かけてピークになっているので、底に到達するにもそれだけ時間を要するのではないかという単純な理由だ。それと、第3波、第4波にしても重症者数や死亡者数のピークから1.5~2か月で下げ止まりになる傾向からそう思っている。

新型コロナウイルス感染症がそれほど流行していないときに、どちらが先行するかによると思っている。昨年の10月下旬は底だったような気がするが、それ以前とは異なり、手洗い、マスクなど、非医療的な介入を行っていることも影響しているのかもしれないが、インフルエンザの流行はなかったように思われる。下のグラフは国立感染研究所の資料から引用したものであるが、2020年の水色の山は過去に比べて小さく2021年の赤色の線には山が無い。

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出典:国立感染研究所 インフルエンザ過去10年との比較

南半球の南米やオーストラリアでは、7月、8月は冬の時期なので、事例としては学びやすい。インフルエンザが流行していたかという質問に対してはNoで、COVID-19が蔓延していたという答えが返ってくるだろう。下のグラフはオーストラリアにおける確認されたインフルエンザの届出(2016年1月1日~2021年8月29日、診断の月・週別)であるが、2020年および2021年はほとんど報告がないことがわかる。

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出典:Austrarian Government, Depaartment of Health

Department of Health | Australian Influenza Surveillance Report and Activity Updates – 2021

オーストラリアでは2シーズン、インフルエンザが無かったということから、恐らくではあるが、2021/2022年にはインフルエンザが蔓延する可能性は少ないと思う。

ブースターショットは必要になるか?

イスラエルの事例からすれば、ブレークスルー感染を防ぐためにブースターショットは必要だということは想定できる。一方、WHOは全世界にくまなくワクチンを供給するためには年内はブースターショットは停止するべきだと言っている。

日本ではいつ頃に必要になるかということである。ブースターショットで抗体価が上昇する報告は出始めている。日本国内では3回目が必要かもしれないような報道も出ているが、それをどう判断していいかは今後明らかになっていくであろう。

東京都のモニタリング会議の資料が一つの手がかりになるかもしれない。下図はそのうちの一つ、重症患者数を年代別に示したものである。デルタ変異株の第5波が6月下旬を底として大きくなっている。

  • 7/26以降は、50代の薄紫色の上にある60代以上はさほど重症患者者数が多くなかったのに対して、8/16以降は60代以上の数が比較的多く目立つ印象を受ける。
  • 60代は65歳以上が比較的早期にワクチン接種を受けた年齢層に該当するはずなのに、この時期にきて重症者数がなぜ多いのかが不思議だ。
  • 8/16時点では50代が全年齢層の中で多く占めるがこれはワクチン接種がまだ追い付いていなかったのかもしれない。
  • 40代においてもワクチン接種が追い付いていないが、年齢による重症化のリスクが比較的少ないことで少ない数に見えるのかもしれない。

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出典:東京都モニタリング会議 (2021/9/9)

ワクチン接種による重症化が防げるという話は必ずしもそうではないことを示しているのではないだろうか?60代以上の重症者数が比較的多く目立つことは、ワクチンの効果切れなのか、ワクチン接種後に抗体価が減少してしまったのか、そもそも必要な抗体量ができていなかったのか(これは個人差によるところが大きいので仕方がないかもしれない)、推測はいくつもできる。他にも可能性があるかもしれない。

あるいは、第3波、第4波よりも感染力が強いため、新規感染者数もかなり多く出ているため、そうした状況を考えれば、60代以上は第3波と同程度の重症者数かそれ以下なのでワクチンの効果は少なくとも影響しているだろうと見るのが適切なのかもしれない。これも前提をどこに設定するかで良くも悪くも言えてしまうので、状況をよく踏まえてみていく必要があると思う。

第5波は下火になっていくが、その時においても新規感染者数が60代以上が多く占めるのであれば、ワクチンの効果が少なくなってきていることを疑ってもいいのではないかと思う。もう一つ注目すべきことは、医療従事者の中で感染者が増えてくるかどうかである。医療従事者はワクチン接種が早く行われてきた。一番抗体価が少なくなってきているグループであるからだ。そこで感染者が認められるのであれば、ブースターという手段は選択肢としてもいいのかもしれない。なお医療従事者はこうした事情を誰よりも知っていると思われるので、その選択を尊重していくことが賢明だと思う。

 

今回の考察では3つの点に絞って述べてみたが、まだまだCOVID-19については不明なところがある。変異株によってウイルス自体の特性が大きく変わってきたことで、昨年の考え方を今に適用したところで意味をなさないと思っているのは皆さんそうではないのだろうか? 1か月後にも考察してみたいと思うが、状況が変化していけば今回述べたことと異なることを言っている可能性があるが、現状を正しく認識して感染予防(換気、手洗、マスクなど)に努めていきたい。