kennyheadway's thinking

こちらは日々思うこと、COVID-19について思うこと述べていくことになりそうかな。

ミュー株について

ミュー株はコロンビア由来

ミュー株とは南米コロンビア由来の変異した新型コロナウイルスのことを言っているようだ。コロンビア共和国の人口は5,034万人(2019)で、日本の約4割程。人口で換算すると6月25~30日のピーク時の感染者数、死亡者数は日本のピーク時よりも多いと思う。

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出典:REUTERS COVID-19 Tracker Columbia 2021/9/9

コロンビアにおける新型コロナウイルスの感染状況・グラフ*

ミュー株は、WHOが8月30日に「注目すべき変異株(Variant of Interest)」に指定した。スパイクたんぱく質には、以下の変異の特徴がある。

  • P681H変異。英国アルファ株と同じ変異で、S1/S2フリン切断部位に近く、コロナウイルスでは高い変動性を持つ。ウイルスが細胞に侵入しやすくなるといわれている。
  • E484K変異。南アフリカのベータ株、ブラジルのガンマ株と同じ変異で、ACE2に結合するRBDに存在する。免疫を回避する働きがあるといわれている。
  • N501Y変異。英国アルファ株と同じ変異で、ACE2に結合するRBDに存在する。ACE2への結合力がより高くなるため感染しやすいといわれている。

これらの特徴をみれば、厄介な変異株を寄せ集めたとんでもないような変異株だと思われる。コロンビアで起こったことを調べてみると、何か見えてくるかもしれない。ペルーで流行したラムダ株、ブラジルで猛威を奮ったガンマ株など、南米は由来の変異株がいくつかある。この変異株がデルタ株のように世界中に流行していないのは人流抑制が働いているのかもしれない。南米に直接影響がある隣国はアメリカになるが、アメリカに至っても現在はデルタ株が蔓延している。

現時点で懸念されるのはデルタ株 (WHO)

9/7の米国CNBCニュースでは以下のように報道し、今は最も懸念されるのがデルタ変異株であることを言っている。

WHOによると、ミュー型が出現したにもかかわらず、デルタ型が「最も懸念される」COVIDの亜種である。

急速に拡散するデルタ型は、ミュー型の出現にもかかわらず、コロナウイルスの「最も懸念される」株であると、WHO当局者は9/7に発表した。
WHOのマイク・ライアン博士は、「新しいウイルスが出現した場合、"ベスト・オブ・クラス "のウイルスに対抗できなければならないが、今のところそれはデルタである」と述べた。

www.cnbc.com

 

東大医科学研の研究結果

9/8に東大医科学研究所の佐藤佳准教授のチームは、ワクチンで作られるであろう中和抗体はほぼ効かないとの研究結果をbioRxivに発表した。

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出典:Twitter The Sato Lab (Kei Sato)

https://twitter.com/SystemsVirology/status/1435369160968577024

この研究成果のプレプリント『療養者血清およびワクチン血清によるSARS-CoV-2 ミュー変異株の非効果的な中和』は以下のもので、概要をDeepL翻訳した。

www.biorxiv.org

2021年8月30日、WHOはSARS-CoV-2 Mu亜種(B.1.621系統)を注目の新亜種に分類しました。WHOは、新たなSARS-CoV-2亜種の出現に対して、「ウイルスの特性と公衆衛生上のリスクを比較評価する」ことを主な行動と定義しています(https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/)。ここでは、Mu亜種がCOVID-19回復者およびBNT162b2ワクチン接種者の血清に対して高い耐性を持つことを示している。異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を直接比較したところ、Muスパイクは、現在認識されている他のすべての注目すべき(VOI)および懸念すべき(VOC)バリアントよりも、血清を介した中和に対して耐性があることが明らかになった。これには、現在までに回復期およびワクチン接種を受けた血清に対して最も耐性のあるバリアントであることが示唆されているBetaバリアント(B.1.351)も含まれます(例:Collier et al, Nature, 2021; Wang et al, Nature, 2021)。新たに出現した亜種によるブレイクスルー感染は、現在のCOVID-19パンデミックの際に大きな懸念となっているため(Bergwerk et al.、NEJM、2021年)、今回の調査結果は公衆衛生上の重要な関心事であると考えています。今回の結果は、ワクチンを接種した人、過去に感染した人、未感染の人のいずれに対しても、Muバリアントがもたらすリスクをよりよく評価するのに役立つでしょう。

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出典:Ineffective neutralization of the SARS-CoV-2 Mu variant by convalescent and vaccine sera (bioRxiv; sep 8, 2021) オリジナル図に翻訳を加えた。


このプレプリントの図より、ミュー株については中和抗体価が一番低いことが示されている。従来株は武漢株であるが、Cのワクチン接種者の血清から中和抗体価が7.6分の1となっている。BのCOVID-19罹患者の血清の中和抗体価は従来株の12.4分の1ということである。Twitterでこの研究成果の見方は以下のようにある。

BNT162b2ワクチン(ファイザー社製)は、従来株(武漢株)のスパイクたんぱく質をベースに設計されたmRNAワクチンであるので、この研究結果で示すように、ミュー株のみならずスパイクたんぱく質の変異で免疫逃避をする働きがあるとされる南アフリカのベータ株もほかの変異株と比較して中和抗体価が低い。現在蔓延中のデルタ株においては、約3分の1と中和抗体価が低くなっているが、それよりも低いことが示されている。

免疫については、以下の頁で説明されている。

www.macrophi.co.jp

免疫には自然免疫と獲得免疫がある。獲得免疫には細胞性免疫と液性免疫がある。ワクチンで生成される抗体は液性免疫由来である。ということで、免疫の手段を複数準備しておくことが今できることではないかと思う。睡眠をしっかりとる。ストレスを解消するなど、体内の免疫力を上げることが感染の確率を下げることになるのではないだろうか。ほかにはマスク、室内の換気など、ウイルスが含まれている可能性がある飛沫やエアロゾルから避ける対策をして確率を下げていく。これが基本スタンスで、2,3年は続くということを想定していった方がよいように思われる。

この記事を投稿した時期は、新規感染者の最大値のほぼ半分程度まで提言してきた。名ばかり緊急事態宣言とは言えども、自粛の積み重ねで減少してきたことと考えてもよいと思う。このまま減少して季節が秋から冬になりかかるときに、どのようになっているかを想定してできる対策をしていきたい。