ブースターショットは抗体価を増やすようだ
イスラエルの接種状況を見てみよう。日本の感染者数も見てみよう
イスラエルでは、世界に先駆けてワクチン接種が進んだ国と言われいる。しかしここにきてワクチン接種後の新規感染者数が増加し、3回目の接種(ブースターショット)が進められている。実際のところ、人口100万人当たりの新規感染者数は、緑色のイスラエルが6月下旬から増え始めている。参考までに、英国、米国、EU、日本もグラフに掲載している。
日本の数が比較的少ないが、これは検査数が他国に比べると少ないことが背景にあることを念頭に置いておこう。厚生労働省の国内の発生状況などでは、PCR検査の1日の能力が33万件ほどだと言っている。単純に件数の20%が新規感染者(新規陽性者)としたら、6.6万人ということになる。今回のデルタ変異株で検査が回っていかないとは言っていたが、新規感染者数の最大が2.5万人程度だ。どうもこの数字は懐疑的だ。第2感染症相当というルールで保健所主導で人手がなく、自宅療養者をたくさん出して、放置されて死に至らせる例も散見する。数字は正直なところもあるが、こうした背景がある数字だということも念頭に置かないといけないだろう。
ワクチン接種で2回とも接種した状況は、イスラエルが先行して5/1の時点でほぼ60%の水準で横ばいである。日本においては5/1はまだ始まったばかりというか医療従事者が先行して1%程度である。
ブースターショットを行う背景には、ワクチンでできるであろうIgG抗体が経時的に減少してきていること、従来株(武漢株)で設計されたワクチンは変異株によっては効力が完全にカバーしきれないことなど、その理由がいくつかあるであろう。
イスラエルでは、下グラフのように8月初めからブースターショットが始まり、9/11時点で30%を超えた水準である。
研究報告での一例では抗体価↑
ブースターショットで抗体価を増やすという報告が、9/2にJAMA (Journal of the American Medical Association; 米国医師会が発行する医学雑誌)に掲載された。
この研究レターでは、ファイザー社とモデルナ社のワクチンで生成される抗体価を50歳未満、50歳以上で比較している。またブースト前とブースト後で抗体化の増加程度を示している。
- Aのグラフは年齢を分けることなく、基線(接種前)の抗体価、ブースト前(2回接種後)の抗体価、ブースト後(3回目接種後)の抗体価を表している。抗体価は、基線→ブースト前→ブースト後と増加している。
- Bのグラフは50歳を境にして、ブースト前のP社とM社の抗体価を表している。P社よりもM社の方が抗体価が高いことを示している。M社は年齢を分けてもさほど抗体価に大きな変化が無いが、P社は年齢を分けると50歳以上の方がより低い傾向が認められた。
- Cのグラフは、50歳を境にして、ブースト後のP社とM社の抗体価を表している。この結果では、ブースト前よりもブースト後の方が抗体価が増えている。M社の方がP社に比べると若干抗体価が高い傾向がある。
この研究レターでは、以下のように考察している。
今回のコホート研究では、定量法を用いて、BNT162b2が高齢者と若年者の間で相対的に低い抗体レベルを誘発したことを確認しており、これは新しい報告と一致しています4,5。一方、mRNA-1273を投与された高齢者と若年者では、ブースト後の抗体レベルに差は見られなかった。高齢者で見られた免疫原性の違いは、BNT162b2では30μg、mRNA-1273では100μgと、それぞれのワクチンに使用されたmRNAの量に関係している可能性がある1,2。 この研究の限界は、中和抗体が測定されていないことである。しかし、いくつかのグループが、SARS-CoV-2の結合と中和抗体の間に強い相関関係があることを報告している6。SARS-CoV-2に対する結合抗体が、COVID-19に対する臨床的防御を予測するために使用できるかどうかについては、さらなる研究が必要である。
ブースターショットは抗体価を増やすことは分かったが、副反応はどの程度かという情報とか、これまでにない副反応は報告されているかとか、知っておくべきことはいろいろ出てくるのではないかと思う。日本国内では、第5波が10月下旬に終息することを想定し、この冬に第6波が発生することを想定し、どの年齢層でどのように感染していくのかなど、動向を見守っていくことでブースターショットの是非がはっきりするのではないかと現時点では思う。